4.Metaspaceのためのデザインアプローチ
どのように、情報をものの振る舞いに比喩させるか。言い換えれば、スタイリングや機構によって具体的な形にどう表すか。ここにデザインの力が発揮される。私たちがデザインしてきた中で見出したヒントを以下に挙げる。
・空間に出すべき情報をどのように比喩させるか?その根幹の発想が個々のデザイナーに求められる。その際に“詩的”“情緒的”な表現を念頭に置かなければならない。そうしなければ、凡庸な周辺機器に落ち着いてしまう。そのような製品は「デバイス」や「アプリ」の考え方で設計しているのかもしれない。実際のところ情報通信機器を作ろうとしているわけだが、その目的は情報と情報の繋がりではない。最終的に心地よい生活空間を作り出すことを念頭に置き、人や情報と、建築・空間・家具との繋がりを設計しなければならない。
・表現の上で「コンピューターそのものが起こす物理的な現象」を用いると、テーマに対してより誠実になりうる。それは、情報を実体化するための機構が擬似的な再現ではないということである。例えば、CPUの発熱やファンの回転といったコンピュータの動作に基づく物理現象の中に、それが見つかるかもしれない。
・ここまで書いてきた生活空間像に基づいて、一つの価値観に向かっているのは間違いないが、その意味を重視する必要がある。手法はあくまで手法に過ぎず、最終的には「どの情報を選定するか」そして「その表出表現によって人にどう感じて欲しいか」が大切になる。これがまさしく個々の作家性の表現にもなるだろう。
以上の設計手法をもとに作られた「情報を表出するもの」が集まることで、人と情報の心地よい関係が生まれた「新しい生活空間」が形作られる。
それを私たちはこう名付けた——Metaspace。