2.物理的な空間にあるべき情報
Metaspaceにふさわしい、物理的な空間に出すべき情報の対象を決定する指標として、以下の大まかな分類を行なった。ただし、絶対的な種類分けではなく、いくつかの要素を含む情報やここに網羅していない情報もあると考えられる。
まず、情報化されていない情報。つまり、認識されていないために、情報として伝えられていない価値を見出すこと。
その例として、ある文化圏にしかない「言葉」が挙げられる。「木漏れ日」は英語に直訳できない言葉のひとつで、新緑・そよ風・日差しが合わさったものに価値を見出したものだ。それは、その言葉になることで初めて認識できる概念といえる。また、類型となる「もの」として「風鈴」が挙げられる。抽象的な書き方になってしまうが、情報化されていない情報とは「風鈴的な価値」をもたらすものである。
なお、このような性質の物事自体を再考させるのではなく、あくまで情報との関連において、このような性質の現象を発見、表出することを目的とする。また、難解すぎる作品、あるいは純粋な芸術作品にならないよう注意する必要がある。
次に、スマートフォンを始めとした情報通信機器を通すべきでない情報だ。この場合、情報通信機器に対する接触頻度を減らすことができる。例えば、以下のような情報である。
・「緊急地震速報」「チャイム」といった、急な行動を要するもの。
・「外出先の天気」「次のTodo」といった、次の行動につながるもの。
・「昨日と今日の気温差」「親しい人の活動状況」といった、生活と密接な連続性があるもの。
なお、詳細情報や個人的な情報はむしろ情報通信機器を通した方がよい可能性があり、情報の選定や表現には注意が要る。また、直接的な実用性が高い分、安易なものになりかねないため、注意深く取り扱う必要がある。
最後に、技術発展によって忘れられてきた情報である。
例えば、現在当たり前に使われているグレゴリオ暦は、機械的で管理しやすく利便性が高い。一方で、日本の文化や季節感に根ざした二十四節氣・七十二候は、日本人にとってより繊細に豊かな四季を感じられる。このような概念に目を向ける。
ただし、あくまで情報通信技術と関係する形で考える必要がある。そうでない場合、今回のテーマから外れてしまうし、内容が既出のコンセプトと重複してしまう。