1.人と情報の関係

もともと、人は物理的な空間の中で情報を認識していた。今や、スマートフォンを始めとした高度な情報通信機器が、物理的な空間の制約を超え、あらゆる情報を人の認識可能な形に実体化している。一方で、画面を始めとしたインターフェースは私たちの気を引くように働く。情報の存在を過度に意識させられてしまい、身の回りにある価値から目を逸らしがちだ。果たして、ここに人と情報との心地よい関係が生まれているのだろうか?

この先にはどのような未来が待っているだろう。ますます増える情報を、より高度に発達した情報通信機器で受け取ったり、あるいはVR技術による仮想空間で“直接”処理するようになるかもしれない。物理的な空間の価値が、今まで以上に薄れていく…。

そんな中、異なる将来像も登場しつつある。人工知能——AIが人にもたらす情報を適切に管理するというものだ。現在でも、カレンダーに登録した情報を元に出発するべき時刻が通知される機能や、通知を細かくコントロールする機能、スマートフォンの使いすぎをOSレベルで防止する機能等が導入されている。AI技術によって、人に伝わる情報が積極的に制御されるようになれば、情報が暴力的にやってくることはそもそもなくなるだろう。

このような未来観を前提とすれば、現在の発展の方向性はますます「合理的」といえる。情報量がAIによって適切に管理され、現在抱えている不快さが解消するのならば、汎用的であらゆる情報を表現できる情報通信機器で全く問題ないのではないか。むしろ、情報が様々なものを通して表現されるよりも、画面の中に収まっていてくれた方がよいかもしれない。

しかし、空を見上げれば天気が分かるように、わざわざスマートフォンを始めとした情報通信機器を経由する必要がない情報もあるのではないだろうか?もちろん、それに適した情報であるならば問題ない。しかし、本当に、あらゆる情報をそれを通して実体化することだけが正しいのだろうか?私たちをふと涼しげな気持ちにさせてくれる、風鈴のような心地良さで、具体的でなく伝えるべき情報もあるのではないか。

情報という、ものを通して実体化される形のない内容を形づける上で、全てを多目的・汎用的な情報通信機器を通して合理的に伝えられるのではなく、生活空間の中で伝えられるべき情報がある。

つまり、情報の持つ性質に合わせた出力先を与えることで、人と情報の心地よい関係を生み出すことができる——これが、今回私たちが導いた発想である。

〈参考書籍〉AIアシスタントのコア・コンセプト 人工知能時代の意思決定プロセスデザイン,2017年

人と情報の関係を説明する図

戻る