itonamiの外観

itonami

河野光佑

家族や友人など、親しい相手と同じ空間で過ごすことは、私たちに温かさをもたらし心を豊かにする。それは、その人が作る料理の匂いであったり顔を洗う音などの「連続的な生命感」が、その人の気配を醸し出し、私たちがそれを受け取ることで、共にいることの安心感を享受できているからだと考える。

現在、遠方に居る親しい相手と頻繁に会えない場合、私たちは連絡する手段としてSNSやビデオ通話を用いることが多い。このような断続的な手段では安心感を得ることは困難であると考える。一方で、私たちは、個人の時間も同じように大切にするもので、いくら親しいといえど常に傍にいると疲弊してしまう。

〈itonami〉は遠方にいる親しい人の「動き」を水盆の波紋として表し、私たちに、その人の気配を感じさせる。水は生命の根源であり、波紋は生物の動いた痕跡として経験上認知されている。それゆえ、波紋はプライベートな生活空間のノイズにならず、私たちが心地よく、人の気配を受け取れる媒介になると考える。

itonamiの外観

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